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亡国の楯
何やら三島由紀夫ライクだが、そうではなく最近何かと話題の「亡国のイージス」である。本当に何かと話題なのかどうなのか実はよく知らない。やたらアチコチの書店でメン出しされてるが、おそらく映画化と絡んだキャンペーンか何かだろう。

元々全然ノーマークな作品であったのだが、人に薦められたので読んでみることにした。読書に関しては特に、他人のお薦めにあまり心動かされるタチではないのだが、某しゃちょう日記で「本は借りて読むのがいい」みたいな事が書いてあったの読んで、ナルホドそれも面白いかもしれぬ、と思っていたので早速実行してみたのだ。

この作品、舞台は海自である。ハリウッド御用達のCIAなんかよりひょっとしたらヨクワカラナイ世界かもしれない。より身近なだけに反ってフィクション的と割り切れないのだ。結果、この手のモノから遠ざかってしまいがちなのだが、この作品についていえばその辺りの心配は皆無である。予備知識ゼロでも十分読み進められる。

冒頭において主要な登場人物の造形が描写されているのだが、この過程において舞台となる特殊な環境についての説明が上手に織り込まれているため、誰でも作品世界にすんなりついていけるようになっているのだ。著者は元関係者なのか取材の賜物なのかは判らないが、その持てる情報の全てをブチ込むのではなく、最低限必要な事だけを平易な表現で人物描写の背景に差し込んでいる。この辺り、巧い、と感じさせられた。

さらに、防衛庁のテロ対策ユニットみたいな組織まで登場する。CTUだ。CTUアルメイダ、である。まあアルメイダはさておき、この時点で「高尚な戦争問題モノ」みたいなお堅いものではなく、むしろ「特命武装検事 黒豹シリーズ」的なトンデモ臭すら漂ってくる。そこまでハチャメチャではないが。

とにかく、当初思っていたような敷居の高さはない。万人向けの良作ではなかろうか。一つだけひっかかっているのは、この作品には前日譚があるのだ。「川の深さは」「Twelve Y.O.」の2作である。この両者は前述のアルメイダいや防衛庁テロ対策ユニットが主役の話らしい。「亡国のイージス」では主役、というワケではないがある意味ではアルメイダ3部作とみる事もできる。

今大流行のトリロジーである。マッタク猫も杓子もトリロジートリロジーて。そんな事知ってしまったら全部読まないと気が済まないではないか。ああそうとも、読むともさ。

というワケで「亡国のイージス」、そんな肩凝らないしオススメである。あと国際謀略モノ好きなら、服部真澄あたりも読みやすいので推奨しておく。そして「黒豹シリーズ」に興味を持ったのなら、敢えてヤメロとはいわない。私は「黒豹叛撃」一冊でノックダウンだったが。
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