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人生即ちこれゲインマッ
生きる事、ゲーム。死ぬこと、またゲーム。人生即ちこれゲーム。というワケで能條純一氏の名作漫画「翔丸」である。

能條純一氏といえば、麻雀劇画「哭きの竜」や将棋漫画「月下の棋士」ですっかりお馴染みであろう。いったい如何程の人にとってお馴染みなのかはともかく、彼の作品の多くは、やたら理不尽なクセして妙に説得力のあるカリスマを主人公に描かれている。

そして中でも特にツッコミどころ満載で最高にぶっ飛びなのが「翔丸」だ。私が始めてこの作品に出会ったのはもう10年以上も前の事であるが、未だに時折読み返してはホクホクしている。

さてこの作品の主人公、竹田翔丸クンは優等生でいじめられっ子の中学3年生。その日も不良にいじめられて帰ってくる。部屋にこもった彼は、何故か「カッターナイフ」で自分の頬を切る。この瞬間、一人の悪の天才が誕生する。ナゼに?

翌日、登校した翔丸クンにまた不良が絡む。翔丸クンは隠し持っていた「カッターナイフ」で不良の鼻に斬りつけ、横一文字の傷を負わせる。この瞬間、不良は翔丸クンの下僕となる。だからナゼ?

中学を卒業した翔丸クンは、手下の不良グループと共にごくせんでビーバップで落書なワルワル高校に入学する。ターゲットは、グラサンをかけて口ひげを生やした高校生。彼はヤクザの組長の息子だ。

この後、翔丸クンは「カッターナイフ」でもってヤクザ、軍隊、新興宗教といった相手を次々と「翔丸組」に編入していく。とまあ、ストーリーがまず荒唐無稽でスバラシイ。翔丸組て。

次に山のような名セリフの数々。「ぶっ飛びだー」「人生即ちこれゲーム」「翔丸組に入れてあげる」などなど枚挙に暇がない。これのいったいどこが名セリフなのか。読めば解る。

そしてこの物語は、それにかかわった様々な人物の回想という形で綴られているのだ。
”「要するにゲームだったんですよ。」後に翔丸語る。”
後に語る。なんか奥行きがあってカッコよい。
”「あン時のワシぁ、蛇に睨まれた蛙だったんじゃあ」その時のチンピラはそう述懐している。”
エライまたニッチなトコにインタヴューしとるな。

とにかくもう、作品全体が不思議な空気に包まれている。どう見てもおバカなのに、ツッコミどころ満載なのに、読まされる。初見当時中学生だった私と郎党数名、皆カッターナイフを片手に翔丸ごっこに興じていて先生に注意されたりもした。後でその先生に漫画を紹介したところ、程なくして彼もまた翔丸組と化した。

生きる事、ゲーム。死ぬこと、またゲーム。人生即ちこれゲーム。

いい言葉だ。作中の趣旨とはマッタク違うが、私も残りの刑期をゲームとして楽しんで勤め上げていこうかと思っている。現在ジワジワ執行中の死刑を、どうせなら楽しむくらいよいではないかと思うのだ。あと、リストカットでこの世とオサラバしたいとお考えのそこのアナタ、切る場所を間違っている。ホッペだ、ホッペいっとけ。

そんなワケで、絶滅寸前の私にちょっぴり、ほんのちょっぴり今後の指針を与えてくれたような気がしないでもない「翔丸」。オススメである。
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